日本でのがんによる死因順位は第一位
2022年にがんで亡くなった日本人は、男性が22万2,467人、女性が15万9,038人でした。死亡総数に占める割合の26.5%になります。日本人の約3人に1人はがんで亡くなるという、誰の身にも起こりうる病気なのです。
厚生労働省 「人口人口動態統計(確定数)」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei21/index.html
もし、がんと宣告されて余命を告げられたら。その日から始まる、目まぐるしい闘病生活と病気と向き合うことで生じる葛藤と不安。そして残された家族への思い。
今回は、緩和ケア病棟に勤務経験のある看護師と、訪問看護ステーションでの勤務経験のあるリハビリ療法士の体験を交え、終の棲家はどう選べばいいのか?をご紹介します。
がん治療の流れは?
主流である4つのがんの治療法の柱
- 手術療法
- 放射線療法
- 化学療法(抗がん剤)
- 免疫療法
これらの治療を複合的に組み合わせて行うこともあります。
臓器ごとの病気の進行度(ステージ)に合わせて治療が計画されます。臓器ごとに治療のガイドラインがあり、それに合わせて標準的治療を受けるのが一般的な流れになります。
近年では、標準的治療に早期から緩和ケアを並行して行うことで、治療効果を上げる、余命が伸びるといった効果も期待されています。
緩和ケアとは?
緩和ケアは、がんやその他重篤な病気のすべての時期において、患者様とそのご家族様へ医療・介護のケアを行います。
患者様が闘病と社会生活が両立できるよう、「病気と共により良く生きる」ことをポイントとしています。
その積極的治療を続けながら家事・仕事に専念する患者様もおられ、精神的・社会的ケアを重点に置く医療ケアになります。
そのため、在宅での訪問診療にて緩和ケアを提供する病院もあり、住み慣れた自宅での治療ができるようになりました。
ターミナルケアに切り替わるタイミングは?
治療を継続し、残念ながら治療の効果が得られにくかった場合は、どのような流れになるのでしょうか?下記の場合は、副作用によるデメリットも考慮し、ターミナルケアに切り替えることが多いようです。
ターミナルケアに切り替えるタイミング
- 標準的治療が功を奏さない。
- 闘病生活による体力の低下が生じている。
- がんの進行により積極的な治療が負担になる
ターミナルケアとは?
ターミナルケアは、緩和ケアと同様に、患者様の苦痛を和らげる治療を行います。
違いは死期が迫った患者様が対象になります。「どう死を迎えるのか」という視点の医療ケアです。患者様の病状が不可逆的であるため、疼痛や症状の緩和、心身の快適さを向上させる対処療法が中心です。
緩和ケアとは異なり、寝たきりの患者様が多い傾向で、治療は痛み、呼吸困難、吐き気の緩和に重点を置き、清拭や排泄の介助を受けることになります。
患者様とそのご家族は、死期が近づくにつれて、ストレスや不安を徐々に抱えます。
患者様の安らかな旅立ちのため、医療スタッフから、臨終に際しての心構えやケア指導、傾聴による心理的なサポートケアも同時進行で受けます。
緩和ケア、ターミナルケアの共通点と違いは?
どちらも一般的な病気の治療と比較して、余命を告知されるケースも多く「命とどう向き合うのか?」が焦点になります。
緩和ケア・ターミナルケアの共通点
- 「患者様の尊厳と自己決定を尊重すること」
- 「患者様のみならず、ご家族を含む総合的なサポート」
- 「個別的ケアを提供するための医療・事務スタッフによる多職種連携」
上記の3つを軸として、患者様とご家族の意向に最大限に寄り添った治療方針となるのです。
両者の違いは、緩和ケアは病気の進行に伴う症状や苦痛の管理に重点を置き、ターミナルケアは穏やかな最期を迎えるためのケアに特化しています。
緩和ケア病棟と在宅で受ける訪問看護との違いは?
闘病生活が長くなると、患者様もご家族様も「一度家に帰りたい。」と望まれる方が多いようです。
しかしながら「家で体調が悪くなったらどうしよう?」や「病気の家族を自分が自宅で面倒をみれるのだろうか?」など不安を抱えることもあるかと思います。
そこで、病院でケアを受けられる「緩和ケア病棟」と自宅でケアを受けられる「訪問看護ステーション」のご紹介をしたいと思います。
緩和ケア病棟とは?
緩和ケア専門の病棟に入院することで、緩和ケアを受けられます。
緩和ケア病棟は、積極的な治療を行うのではなく、がんによる心身の苦痛を和らげることを目的としています。
一般病棟は異なり、リラックスした環境も配慮しており、四季のイベントや和やかな雰囲気になっています。
患者さんの希望に応じての退院や、一時的な帰宅も可能です。
緩和ケア病棟のメリット・デメリット 在宅で受ける訪問看護ステーションと比較する
緩和ケア病棟のメリット
・在宅医療と異なり、環境に画一した治療方針となりやすい
住み慣れた自宅で行われる在宅医療と異なり、治療の場は病院になるため、環境的に画一した治療方針となりやすい点があります。
認知症の高齢者様や小児がんの患者様などは、ご家族の顔や見れない、自宅の様子がわからないと、闘病も相まって、不安につながることがあります。病院が許可する面談の可能な曜日や時間などを予め確認しておきましょう。
・検査・治療の設備が整っているため、即時に高度な検査や治療が受けられる。
病院は、CTやMRI、超音波検査や血液検査など高度な検査設備が備わっています。これにより正確な評価・診断・治療が即日に行われます。病気の進行や合併症などを正確に捉えることで、高度な治療である「化学療法」、「放射線療法」、「疼痛管理のための神経ブロック」などが行えます。
緩和ケア病棟のデメリット
・コミュニケーションの課題
治療方針は、患者様やご家族の意向により決定するため、医療者と患者様のコミュニケーションが重要です。病気の進行で衰弱し、意思疎通が困難になる場合は、治療方針が立案しにくくなります。そのため、事前にリビングウィルやACPが重要となります。
・在宅医療と異なり、環境に画一した治療方針となりやすい
住み慣れた自宅で行われる在宅医療と異なり、治療の場は病院になるため、環境的に画一した治療方針となりやすい点があります。
認知症の高齢者様や小児がんの患者様などは、ご家族の顔や見れない、自宅の様子がわからないと、闘病も相まって、不安につながることがあります。病院が許可する面談の可能な曜日や時間などを予め確認しておきましょう。
次回は訪問看護ステーションのターミナルケアについてお伝えします。